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月別アーカイブ: 2025年4月

第10回溶接雑学講座

皆さんこんにちは!
合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。

 

さて

~設計~

ということで、溶接業における設計の基本的な考え方から、実務上の重要ポイントまでを、深く・丁寧に解説します。

 

強度・精度・安全性を支える“目に見えない技術設計”の世界

溶接とは、「金属と金属を一体化させる」ための最も重要な接合技術。
建築構造物、橋梁、配管、車両、船舶、圧力容器など、あらゆる分野で利用されており、
その信頼性と安全性は、溶接設計の良し悪しに大きく依存しています。


✅ 溶接設計とは何か?基本的な役割と目的

溶接設計とは、溶接を含む構造物・製品に対して、次のような観点から計画的に仕様を決める技術的プロセスです。

◯ 主な目的

  1. 必要な強度・剛性を確保する

  2. 製造・施工が容易で、コストが最適化されるようにする

  3. 熱変形や応力集中を最小限に抑える

  4. 安全性・品質・耐久性を長期間保つ

📌 溶接設計は、“設計図に現れにくいが製品寿命を左右する”技術領域とも言えます。


🧱 構造設計との整合性

「設計者の意図」と「現場の溶接」が噛み合わなければ意味がない

✅ 必須となる整合チェック

項目 内容
接合部の配置 応力が集中する箇所を避ける(角・端部を避ける)
溶接部の方向 引張・せん断・曲げ力に対して最も強い接合方向を選定
継手の種類 突合せ継手/隅肉継手の使い分け(強度・施工性に影響)
板厚の調整 異なる板厚同士の溶接ではスカラップ処理が必要
開先形状 JIS Z 3021などに基づき、適切な角度・深さ・寸法を設計

📌 「設計上はOK」でも、「実際には溶接できない・歪む」というケースも多いため、現場との連携が重要です。


⚙ 溶接方法の選定

 材料・構造・コスト・作業環境に応じた“最適な工法”を設計段階で決める

溶接設計では、使用する溶接法の選定も非常に重要です。

✅ 主な溶接法と用途の一例

溶接法 特徴 主な用途
アーク溶接(被覆アーク) 手軽・汎用性高い 鉄骨・建築構造物
TIG溶接 高精度・クリーン ステンレス・アルミ配管
MAG/MIG溶接 半自動・連続作業向き 自動車部品・製缶
スポット溶接 高速・省力 薄板・自動車・家電製品
サブマージアーク溶接(SAW) 高厚板に対応・自動化向き 圧力容器・橋梁

📌 設計者は「どの工法が現場に最も適し、品質・コスト・安全性を両立できるか」を見極める必要があります。


🔥 熱変形・歪みへの設計的配慮

 “熱”がもたらす見えないリスクと向き合う

溶接は「熱加工」であり、高温による金属の膨張→収縮=歪みの発生がつきものです。

✅ 設計で配慮すべき点

  • 対象部材の拘束条件の緩和(可動部・スリットの設置など)

  • 溶接順序や位置の工夫(対称溶接・点付け→本付け)

  • 組立時のプレストレス設計(意図的な逆歪みなど)

  • 余盛寸法の適正化(溶着量の過剰は歪みの原因に)

📌 熱による歪み対策は、「施工後の補修では遅すぎる」ため、設計段階での想定が極めて重要です。


📐強度設計と応力解析

 壊れない構造のための「計算」と「感覚」

✅ 設計で考慮すべき荷重

  • 静荷重(自重、常時荷重)

  • 動荷重(風圧、地震、振動)

  • 局部応力(ボルト・脚部支持点)

✅ 応力分布と接合設計

  • 応力集中部を避ける接合位置選定

  • 応力方向に沿った溶接(せん断応力に強い配置)

  • 部材厚さと溶接サイズのバランス

📌 JIS Z 3001「溶接構造設計標準」や建築基準法、道路橋示方書などの法令・基準に基づいた設計が必要です。


✍ 図面への反映と溶接記号の正しい記載

設計者が意図しても、現場に正確に伝わらなければ意味がありません。

✅ 図面に盛り込むべき内容

項目 内容
溶接記号 JIS Z 3021に準拠(突合せ、隅肉、フルペネなど)
寸法指定 開先角度、余盛寸法、溶接長、ピッチ
工法指定 TIG/MAGなどの明示(必要に応じて)
補足情報 熱処理条件、溶接順序、支持方法などの注意書き

📌 溶接記号の読み間違いが現場トラブルの原因となるため、記載はシンプルかつ明確に。


✅ 溶接設計は「技術者の責任と工夫」が問われる仕事

溶接は、一見単純な接合作業に見えますが、
その背後には、熱・力・材料・環境といった複雑な要素の融合設計があります。

✔ 強度・剛性を保つ接合方法の選定
✔ 熱影響による歪みを防ぐ工夫
✔ 作業性とコストを見据えた最適設計
✔ 安全性と保守性を意識した構造配置

それら一つひとつが、製品の品質と現場の信頼につながっています。

設計段階でどれだけ先を見据えられるか。
それが、良い製品・安全な構造物を生み出す「設計者の力量」なのです。


📋 溶接設計におけるチェックリスト(保存版)

カテゴリ 確認項目
接合部設計 応力方向、継手位置、開先形状、板厚対応
溶接法選定 材料適合性、作業環境、コスト、品質要求
歪み対策 溶接順序、補強部設計、対称配置
応力解析 荷重計算、疲労対策、冗長設計の有無
図面記載 JIS記号、寸法、溶接長、注意書きの明記

 

 

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第9回溶接雑学講座

皆さんこんにちは!
合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。

 

さて

~確認事項~

ということで、今回は、溶接業における事前確認事項を、実務目線で深く解説いたします。

 

安全・品質・効率を守るための“段取り前の段取り”

溶接は、製造業や建設業において「構造を支える」重要な工程です。
鉄骨や配管、橋梁、船舶、機械フレームなど、あらゆる分野で使用されており、
一つの不良が
重大な事故や大規模な手戻りにつながる可能性もあります。

だからこそ、溶接作業においては、「作業前の確認」が極めて重要です。


✅ 図面・仕様の確認

 すべては「正しく読む」ことから始まる

溶接作業の第一歩は、設計図や溶接指示図を正確に読み解くことです。

🔍 確認すべきポイント

項目 確認内容
溶接記号 種類(突合せ/隅肉など)、サイズ、長さ、角度
溶接部位 部材の取り合い位置、交差点、継手の種類
材質情報 母材の種類と強度(SS400、SUS304等)
溶接方法 アーク溶接/TIG/MAG/スポット等の指定
溶接順序・工程 歪み防止のための指定順序の有無

📌 「勝手な自己判断」で施工すると、強度不足・歪み・クレームの原因になります。


🧱 母材・溶接材料の確認

適材適所を守らないと、構造不良につながる

✅ 母材(ベースメタル)の確認

  • 材質、板厚、表面のサビ・油・汚れの除去状況

  • 異材溶接(例:鉄とステンレス)時の注意点

✅ 溶接材料(ワイヤ・電極・ガス等)の確認:

材料 確認事項
溶接棒・ワイヤ 材質の適合、保管状態、ロット管理
保護ガス 種類(CO₂/Ar混合)、流量、ボンベ残量
フラックス(被覆材) 湿気による性能低下がないか
乾燥処理 低水素系電極は事前の乾燥が必須(300〜400℃)

📌 材料が正しくても、管理が甘いと品質不良が発生します。事前点検は怠らずに。


🧯 安全設備と作業環境の確認

 人命を守るための“必須条件”

溶接作業には、高熱・強光・火花・有毒ガスといった多くの危険要素が含まれます。

✅ 作業前の安全確認項目

項目 内容
火災防止 可燃物の撤去、消火器・水バケツの設置
換気設備 排気装置・フードの稼働確認(ヒューム対策)
保護具 溶接面、革手袋、防炎服、安全靴、耳栓など
アース接続 接地状態の確認と漏電防止
足場・作業姿勢 高所作業時の墜落防止、安定した体勢確保

📌 現場での事故の多くは、「当たり前の確認を怠った」ことが原因です。


🧰 設備・工具・機器の事前点検

 施工精度と安全性の両方に直結する工程

✅ 点検すべき機器

設備 点検内容
溶接機本体 通電、表示パネル、異音・異臭の有無
ケーブル類 断線・焼損・接触不良
トーチ・ホルダ 消耗品の状態、ノズルの詰まり
ガス調整器 圧力計の動作確認、漏れの有無
グラインダー・ケレン機 回転ブレ・砥石の摩耗状態

📌 機器トラブルによる作業中断は、生産性だけでなく安全リスクも高めます。


🔎 溶接技能・資格の確認

 誰が作業するかで、仕上がりは大きく変わる

溶接作業には、資格が必要な作業と、誰でもできる作業があります。

✅ 確認するべき項目

  • 作業者の溶接技能資格(JIS Z 3801など)の有無

  • 指定された施工方法に対応した資格範囲内か

  • 特定建設業ではWES、AW検定、ボイラー溶接士等の資格証明の提出が必要なケースあり

📌 無資格者の施工は、重大事故や元請けからの指導対象になることも。


📝 施工管理と検査体制の整備

品質トラブルを未然に防ぐための「管理の目」

事前に品質管理・工程管理のルールを確認し、現場での迷いや属人的判断をなくします。

✅ チェックポイント

項目 内容
WPS(溶接施工要領書) 許容電流・速度・前処理・後処理が定義されているか
PQR(溶接施工試験記録) 検査結果の記録とトレーサビリティの確保
外観検査・寸法検査 作業後に即チェックできる体制があるか
非破壊検査(RT/UT/MT/PT) 必要な検査項目と実施手配は済んでいるか

📌 検査体制は、顧客・元請けからの信頼に直結します。準備は万全に。


✅ 溶接は「段取り命」の仕事。事前確認が品質と安全を支える

溶接作業においては、「実際の作業時間」よりも、事前準備や確認作業の質が最終結果を左右します。

✔ 図面と仕様の確認
✔ 材料と母材の適合性
✔ 作業環境と安全対策の徹底
✔ 機器点検と技能の確認
✔ 品質検査の体制構築

これらを抜きにした「いきなり施工」は、事故・不良・やり直し・信用喪失の元です。

溶接は、“火花の裏に設計と管理がある”
そのことを、すべての技術者が忘れてはならないポイントです。


📋 溶接業の事前確認チェックリスト(保存版)

分類 チェック内容
図面 溶接記号、位置、順序、材質の読み取り
材料 溶接棒/ガス/母材の適合、保管状態
安全 火災対策、換気、保護具、足場確認
設備 溶接機・トーチ・ガス系統の点検
人材 資格者の配置、技能証明、健康状態
品質管理 WPS・PQR・検査手配・測定機器準備

 

 

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