
皆さんこんにちは!
合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。
さて
~設計~
ということで、溶接業における設計の基本的な考え方から、実務上の重要ポイントまでを、深く・丁寧に解説します。
強度・精度・安全性を支える“目に見えない技術設計”の世界
溶接とは、「金属と金属を一体化させる」ための最も重要な接合技術。
建築構造物、橋梁、配管、車両、船舶、圧力容器など、あらゆる分野で利用されており、
その信頼性と安全性は、溶接設計の良し悪しに大きく依存しています。
溶接設計とは、溶接を含む構造物・製品に対して、次のような観点から計画的に仕様を決める技術的プロセスです。
必要な強度・剛性を確保する
製造・施工が容易で、コストが最適化されるようにする
熱変形や応力集中を最小限に抑える
安全性・品質・耐久性を長期間保つ
📌 溶接設計は、“設計図に現れにくいが製品寿命を左右する”技術領域とも言えます。
「設計者の意図」と「現場の溶接」が噛み合わなければ意味がない
項目 | 内容 |
---|---|
接合部の配置 | 応力が集中する箇所を避ける(角・端部を避ける) |
溶接部の方向 | 引張・せん断・曲げ力に対して最も強い接合方向を選定 |
継手の種類 | 突合せ継手/隅肉継手の使い分け(強度・施工性に影響) |
板厚の調整 | 異なる板厚同士の溶接ではスカラップ処理が必要 |
開先形状 | JIS Z 3021などに基づき、適切な角度・深さ・寸法を設計 |
📌 「設計上はOK」でも、「実際には溶接できない・歪む」というケースも多いため、現場との連携が重要です。
材料・構造・コスト・作業環境に応じた“最適な工法”を設計段階で決める
溶接設計では、使用する溶接法の選定も非常に重要です。
溶接法 | 特徴 | 主な用途 |
---|---|---|
アーク溶接(被覆アーク) | 手軽・汎用性高い | 鉄骨・建築構造物 |
TIG溶接 | 高精度・クリーン | ステンレス・アルミ配管 |
MAG/MIG溶接 | 半自動・連続作業向き | 自動車部品・製缶 |
スポット溶接 | 高速・省力 | 薄板・自動車・家電製品 |
サブマージアーク溶接(SAW) | 高厚板に対応・自動化向き | 圧力容器・橋梁 |
📌 設計者は「どの工法が現場に最も適し、品質・コスト・安全性を両立できるか」を見極める必要があります。
“熱”がもたらす見えないリスクと向き合う
溶接は「熱加工」であり、高温による金属の膨張→収縮=歪みの発生がつきものです。
対象部材の拘束条件の緩和(可動部・スリットの設置など)
溶接順序や位置の工夫(対称溶接・点付け→本付け)
組立時のプレストレス設計(意図的な逆歪みなど)
余盛寸法の適正化(溶着量の過剰は歪みの原因に)
📌 熱による歪み対策は、「施工後の補修では遅すぎる」ため、設計段階での想定が極めて重要です。
壊れない構造のための「計算」と「感覚」
静荷重(自重、常時荷重)
動荷重(風圧、地震、振動)
局部応力(ボルト・脚部支持点)
応力集中部を避ける接合位置選定
応力方向に沿った溶接(せん断応力に強い配置)
部材厚さと溶接サイズのバランス
📌 JIS Z 3001「溶接構造設計標準」や建築基準法、道路橋示方書などの法令・基準に基づいた設計が必要です。
設計者が意図しても、現場に正確に伝わらなければ意味がありません。
項目 | 内容 |
---|---|
溶接記号 | JIS Z 3021に準拠(突合せ、隅肉、フルペネなど) |
寸法指定 | 開先角度、余盛寸法、溶接長、ピッチ |
工法指定 | TIG/MAGなどの明示(必要に応じて) |
補足情報 | 熱処理条件、溶接順序、支持方法などの注意書き |
📌 溶接記号の読み間違いが現場トラブルの原因となるため、記載はシンプルかつ明確に。
溶接は、一見単純な接合作業に見えますが、
その背後には、熱・力・材料・環境といった複雑な要素の融合設計があります。
✔ 強度・剛性を保つ接合方法の選定
✔ 熱影響による歪みを防ぐ工夫
✔ 作業性とコストを見据えた最適設計
✔ 安全性と保守性を意識した構造配置
それら一つひとつが、製品の品質と現場の信頼につながっています。
設計段階でどれだけ先を見据えられるか。
それが、良い製品・安全な構造物を生み出す「設計者の力量」なのです。
カテゴリ | 確認項目 |
---|---|
接合部設計 | 応力方向、継手位置、開先形状、板厚対応 |
溶接法選定 | 材料適合性、作業環境、コスト、品質要求 |
歪み対策 | 溶接順序、補強部設計、対称配置 |
応力解析 | 荷重計算、疲労対策、冗長設計の有無 |
図面記載 | JIS記号、寸法、溶接長、注意書きの明記 |
お問い合わせはお気軽に♪
皆さんこんにちは!
合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。
さて
~確認事項~
ということで、今回は、溶接業における事前確認事項を、実務目線で深く解説いたします。
安全・品質・効率を守るための“段取り前の段取り”
溶接は、製造業や建設業において「構造を支える」重要な工程です。
鉄骨や配管、橋梁、船舶、機械フレームなど、あらゆる分野で使用されており、
一つの不良が重大な事故や大規模な手戻りにつながる可能性もあります。
だからこそ、溶接作業においては、「作業前の確認」が極めて重要です。
すべては「正しく読む」ことから始まる
溶接作業の第一歩は、設計図や溶接指示図を正確に読み解くことです。
項目 | 確認内容 |
---|---|
溶接記号 | 種類(突合せ/隅肉など)、サイズ、長さ、角度 |
溶接部位 | 部材の取り合い位置、交差点、継手の種類 |
材質情報 | 母材の種類と強度(SS400、SUS304等) |
溶接方法 | アーク溶接/TIG/MAG/スポット等の指定 |
溶接順序・工程 | 歪み防止のための指定順序の有無 |
📌 「勝手な自己判断」で施工すると、強度不足・歪み・クレームの原因になります。
適材適所を守らないと、構造不良につながる
材質、板厚、表面のサビ・油・汚れの除去状況
異材溶接(例:鉄とステンレス)時の注意点
材料 | 確認事項 |
---|---|
溶接棒・ワイヤ | 材質の適合、保管状態、ロット管理 |
保護ガス | 種類(CO₂/Ar混合)、流量、ボンベ残量 |
フラックス(被覆材) | 湿気による性能低下がないか |
乾燥処理 | 低水素系電極は事前の乾燥が必須(300〜400℃) |
📌 材料が正しくても、管理が甘いと品質不良が発生します。事前点検は怠らずに。
人命を守るための“必須条件”
溶接作業には、高熱・強光・火花・有毒ガスといった多くの危険要素が含まれます。
項目 | 内容 |
---|---|
火災防止 | 可燃物の撤去、消火器・水バケツの設置 |
換気設備 | 排気装置・フードの稼働確認(ヒューム対策) |
保護具 | 溶接面、革手袋、防炎服、安全靴、耳栓など |
アース接続 | 接地状態の確認と漏電防止 |
足場・作業姿勢 | 高所作業時の墜落防止、安定した体勢確保 |
📌 現場での事故の多くは、「当たり前の確認を怠った」ことが原因です。
施工精度と安全性の両方に直結する工程
設備 | 点検内容 |
---|---|
溶接機本体 | 通電、表示パネル、異音・異臭の有無 |
ケーブル類 | 断線・焼損・接触不良 |
トーチ・ホルダ | 消耗品の状態、ノズルの詰まり |
ガス調整器 | 圧力計の動作確認、漏れの有無 |
グラインダー・ケレン機 | 回転ブレ・砥石の摩耗状態 |
📌 機器トラブルによる作業中断は、生産性だけでなく安全リスクも高めます。
誰が作業するかで、仕上がりは大きく変わる
溶接作業には、資格が必要な作業と、誰でもできる作業があります。
作業者の溶接技能資格(JIS Z 3801など)の有無
指定された施工方法に対応した資格範囲内か
特定建設業ではWES、AW検定、ボイラー溶接士等の資格証明の提出が必要なケースあり
📌 無資格者の施工は、重大事故や元請けからの指導対象になることも。
品質トラブルを未然に防ぐための「管理の目」
事前に品質管理・工程管理のルールを確認し、現場での迷いや属人的判断をなくします。
項目 | 内容 |
---|---|
WPS(溶接施工要領書) | 許容電流・速度・前処理・後処理が定義されているか |
PQR(溶接施工試験記録) | 検査結果の記録とトレーサビリティの確保 |
外観検査・寸法検査 | 作業後に即チェックできる体制があるか |
非破壊検査(RT/UT/MT/PT) | 必要な検査項目と実施手配は済んでいるか |
📌 検査体制は、顧客・元請けからの信頼に直結します。準備は万全に。
溶接作業においては、「実際の作業時間」よりも、事前準備や確認作業の質が最終結果を左右します。
✔ 図面と仕様の確認
✔ 材料と母材の適合性
✔ 作業環境と安全対策の徹底
✔ 機器点検と技能の確認
✔ 品質検査の体制構築
これらを抜きにした「いきなり施工」は、事故・不良・やり直し・信用喪失の元です。
溶接は、“火花の裏に設計と管理がある”
そのことを、すべての技術者が忘れてはならないポイントです。
分類 | チェック内容 |
---|---|
図面 | 溶接記号、位置、順序、材質の読み取り |
材料 | 溶接棒/ガス/母材の適合、保管状態 |
安全 | 火災対策、換気、保護具、足場確認 |
設備 | 溶接機・トーチ・ガス系統の点検 |
人材 | 資格者の配置、技能証明、健康状態 |
品質管理 | WPS・PQR・検査手配・測定機器準備 |
お問い合わせはお気軽に♪