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日別アーカイブ: 2025年4月21日

第10回溶接雑学講座

皆さんこんにちは!
合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。

 

さて

~設計~

ということで、溶接業における設計の基本的な考え方から、実務上の重要ポイントまでを、深く・丁寧に解説します。

 

強度・精度・安全性を支える“目に見えない技術設計”の世界

溶接とは、「金属と金属を一体化させる」ための最も重要な接合技術。
建築構造物、橋梁、配管、車両、船舶、圧力容器など、あらゆる分野で利用されており、
その信頼性と安全性は、溶接設計の良し悪しに大きく依存しています。


✅ 溶接設計とは何か?基本的な役割と目的

溶接設計とは、溶接を含む構造物・製品に対して、次のような観点から計画的に仕様を決める技術的プロセスです。

◯ 主な目的

  1. 必要な強度・剛性を確保する

  2. 製造・施工が容易で、コストが最適化されるようにする

  3. 熱変形や応力集中を最小限に抑える

  4. 安全性・品質・耐久性を長期間保つ

📌 溶接設計は、“設計図に現れにくいが製品寿命を左右する”技術領域とも言えます。


🧱 構造設計との整合性

「設計者の意図」と「現場の溶接」が噛み合わなければ意味がない

✅ 必須となる整合チェック

項目 内容
接合部の配置 応力が集中する箇所を避ける(角・端部を避ける)
溶接部の方向 引張・せん断・曲げ力に対して最も強い接合方向を選定
継手の種類 突合せ継手/隅肉継手の使い分け(強度・施工性に影響)
板厚の調整 異なる板厚同士の溶接ではスカラップ処理が必要
開先形状 JIS Z 3021などに基づき、適切な角度・深さ・寸法を設計

📌 「設計上はOK」でも、「実際には溶接できない・歪む」というケースも多いため、現場との連携が重要です。


⚙ 溶接方法の選定

 材料・構造・コスト・作業環境に応じた“最適な工法”を設計段階で決める

溶接設計では、使用する溶接法の選定も非常に重要です。

✅ 主な溶接法と用途の一例

溶接法 特徴 主な用途
アーク溶接(被覆アーク) 手軽・汎用性高い 鉄骨・建築構造物
TIG溶接 高精度・クリーン ステンレス・アルミ配管
MAG/MIG溶接 半自動・連続作業向き 自動車部品・製缶
スポット溶接 高速・省力 薄板・自動車・家電製品
サブマージアーク溶接(SAW) 高厚板に対応・自動化向き 圧力容器・橋梁

📌 設計者は「どの工法が現場に最も適し、品質・コスト・安全性を両立できるか」を見極める必要があります。


🔥 熱変形・歪みへの設計的配慮

 “熱”がもたらす見えないリスクと向き合う

溶接は「熱加工」であり、高温による金属の膨張→収縮=歪みの発生がつきものです。

✅ 設計で配慮すべき点

  • 対象部材の拘束条件の緩和(可動部・スリットの設置など)

  • 溶接順序や位置の工夫(対称溶接・点付け→本付け)

  • 組立時のプレストレス設計(意図的な逆歪みなど)

  • 余盛寸法の適正化(溶着量の過剰は歪みの原因に)

📌 熱による歪み対策は、「施工後の補修では遅すぎる」ため、設計段階での想定が極めて重要です。


📐強度設計と応力解析

 壊れない構造のための「計算」と「感覚」

✅ 設計で考慮すべき荷重

  • 静荷重(自重、常時荷重)

  • 動荷重(風圧、地震、振動)

  • 局部応力(ボルト・脚部支持点)

✅ 応力分布と接合設計

  • 応力集中部を避ける接合位置選定

  • 応力方向に沿った溶接(せん断応力に強い配置)

  • 部材厚さと溶接サイズのバランス

📌 JIS Z 3001「溶接構造設計標準」や建築基準法、道路橋示方書などの法令・基準に基づいた設計が必要です。


✍ 図面への反映と溶接記号の正しい記載

設計者が意図しても、現場に正確に伝わらなければ意味がありません。

✅ 図面に盛り込むべき内容

項目 内容
溶接記号 JIS Z 3021に準拠(突合せ、隅肉、フルペネなど)
寸法指定 開先角度、余盛寸法、溶接長、ピッチ
工法指定 TIG/MAGなどの明示(必要に応じて)
補足情報 熱処理条件、溶接順序、支持方法などの注意書き

📌 溶接記号の読み間違いが現場トラブルの原因となるため、記載はシンプルかつ明確に。


✅ 溶接設計は「技術者の責任と工夫」が問われる仕事

溶接は、一見単純な接合作業に見えますが、
その背後には、熱・力・材料・環境といった複雑な要素の融合設計があります。

✔ 強度・剛性を保つ接合方法の選定
✔ 熱影響による歪みを防ぐ工夫
✔ 作業性とコストを見据えた最適設計
✔ 安全性と保守性を意識した構造配置

それら一つひとつが、製品の品質と現場の信頼につながっています。

設計段階でどれだけ先を見据えられるか。
それが、良い製品・安全な構造物を生み出す「設計者の力量」なのです。


📋 溶接設計におけるチェックリスト(保存版)

カテゴリ 確認項目
接合部設計 応力方向、継手位置、開先形状、板厚対応
溶接法選定 材料適合性、作業環境、コスト、品質要求
歪み対策 溶接順序、補強部設計、対称配置
応力解析 荷重計算、疲労対策、冗長設計の有無
図面記載 JIS記号、寸法、溶接長、注意書きの明記

 

 

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