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日別アーカイブ: 2025年8月21日

第17回溶接雑学講座

皆さんこんにちは!

合同会社Levi’s商会、更新担当の中西です。

 

~“強く・きれい・早い”~

 

「ビードが乗らない」「ヒケ・ブローホールが出る」「組立後に“曲がる”」——溶接の悩みは尽きません。
ここでは設計→開先→溶接条件→検査→歪み管理まで、現場ですぐ使える型をまとめました。


1|まず“使途と材料”でプロセスを選ぶ

  • 軟鋼(SS材)
     MIG/半自動(GMAW)が主力。屋外・下向以外はFCAWも強い。E7018/ER70S-6が定番。

  • ステンレス(SUS304/316)
     **TIG(GTAW)**で清浄・薄板が得意。低入熱で焼け・歪みを抑える。

  • アルミ(5052/6061)
     AC-TIG/Pulse MIG。酸化膜除去(ワイヤブラシ/ACバランス)と清浄な母材が命。

  • 厚板・大入熱
     **SAW(サブマージアーク)**や多層盛り。予熱・パス間温度の管理が品質を左右。

屋内/屋外・板厚・姿勢・必要強度を軸に選定。**WPS(溶接施工要領書)**で前提を共有するのが第一歩。


2|“開先・合わせ”で8割決まる ✂️

  • 開先角度・ルートギャップを図面で固定(例:V45°/ルート1.5mm等)。

  • 面取り&脱脂:ミルスケール・油・水分は欠陥の原因

  • 仮付け短・点数多めで歪みを抑制。対称配置が基本。

  • ルートフェイス:薄すぎると焼け落ち、厚すぎると未溶け込みになりやすい。


3|条件出しの黄金ルール⚙️

  • 電圧・電流・送給アーク長=一定を狙う。

  • **Stick-out(伸び)**は10〜15mm目安、角度は押し/引きでビード形状を使い分け。

  • パルス薄板・隅肉の入熱低減に有効。

  • ガス:軟鋼はCO₂/混合ガス、SUS/AlはAr系。流量は風・ノズル径に合わせる。

ミニ試験(50×200mmの同条件3枚)でビード高さ・脚長・裏波を確認→WPSへ反映。


4|代表的な欠陥→原因→対策

  • ブローホール(気孔):表面汚れ/湿気/ガス被覆不足 → 脱脂・乾燥・シールド強化

  • 未溶け込み:低電流/速度過多/開先不良 → 入熱↑ or 速度↓、開先再調整

  • アンダーカット:電圧高すぎ/角度不良 → 電圧↓、トーチ角度見直し

  • 割れ:高硬化・急冷・拘束 → 予熱・後熱・拘束緩和・低水素材


5|歪みを“設計で減らす”7手 ️

  1. 対称溶接(左右交互)

  2. スキップ/バックステップ

  3. 短ビード分割(連続長を短く)

  4. 治具・拘束(でも過拘束に注意)

  5. 入熱管理(パス間温度・休止)

  6. 反り代の設計(先曲げ/先反り)

  7. ピーニング/矯正は最後の手段


6|検査・品質記録で“再現性”を担保

  • 外観(VT):脚長・余盛・アンダーカット・欠陥有無。

  • PT/MT:表面・近表面の割れ検出。

  • UT/RT:内部欠陥の確認(厚板・重要部)。

  • 記録ヒート番号・ロット・WPS/パラメータ・検査結果写真台帳で一元管理。


7|安全は“火花の外側”まで ️

  • PPE:遮光面、難燃手袋・エプロン、皮ブーツ。

  • 換気・集塵:ヒューム吸引・局排・屋外作業時の風向に配慮。

  • ボンベ立てて固定、火気から距離。

  • 火花飛散養生シート/火花受け、火の元巡回(Fire Watch)。


8|薄板TIG“鏡面ビード”3ステップ

  1. 清浄(両面脱脂+酸化皮膜除去)

  2. 最小入熱(電流低め・パルス活用)

  3. トーチ角10–15°+短アーク、フィラーは一定リズムで送る


9|事例ミニ:SS400 9t 隅肉溶接の歪み低減

  • Before:連続長300mm一気盛り→**角度ズレ0.8°**発生

  • After:150mm×2スキップバックステップクランプ2点

  • 結果:ズレ0.2°、仕上げ削り**▲40%**、タクトも短縮✨


まとめ ✅

溶接は**設計(WPS)×前処理(開先・清浄)×条件(入熱)×検査(記録)**の総合格闘技。
“強く・きれい・早い”は両立できます。現場に合う型を作って、繰り返し再現していきましょう。✨

 

 

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